私は立ち止まり、ブレザーの袖をぎゅっと掴んだ。


それに気づいた九条も自然と立ち止まる。


「綾乃さんって……もしかして……桐谷のこと……」


「なに?」


私はその冷たい声に俯いていた顔を上げ、九条を見た。


それは今までに見たことのないような漆黒の瞳をしていて。


思わず目をすぐに逸らしてしまった。


「…ううん!何でもない。何でもないの。行こ?」


「桜庭」


強めに言われ、思わず足が、止まる。


「あってる」


「え……」


「桜庭が言おうとしたことあってるよ」



九条は少し悲しそうな切なげな表情だった。