「お合わせなさいますか。」
「え、あ、いや…大丈夫です。
あ、でも…当日はおはるさんに着付けてもらってもいいですか。」
「はい、承知いたしました。」
「ありがとうございます。」
知らない人たくさんいてもいろいろ誤魔化すの大変だし。
「泰成たちも待ってるし、もう行こうか、ちの。」
「うん。」
「おはるさんも、ありがとうございました。」
「いえ。また日曜日、お待ちしております。」
「ありがとうございます、失礼します。」
部屋を出てからちのに「凛って敬語使えたんだね」なんて言われてしまった。
使えるよ敬語ぐらい。
「どんだけばかだと思ってんの。」
「なーに話してんの。」
「泰成くん。」
私たちが廊下で話してたのが聞こえたのか、泰成が部屋からでてくる。
「終わったの?」
「うん、ありがとう。どれも素敵で迷っちゃった。」
「凛が選んでるの見てたら私も着物着たくなった〜っ。」
「いつでもおいで。」
そうこうしてたら、もういい時間で。
「あ、私晩御飯があるから帰らなくっちゃ。」
しばらく泰成たちが待ってるお部屋で話していると、ちのがケータイを見てそう言った。
「じゃあ私も帰ろうかな。
ちの1人で帰らせるの不安だし。」
「どういう意味なのそれ〜?」
「ふふっ…、何でもないよ。」
夜空を見ながらちのと歩く。
「夏休みさあ、いっぱい遊ぼうね!」
「海とか、花火大会とか。」
「そう!凛の家、泊まりに行きたいなあ〜!」
「私の…?
親が、いないときにね。」
そんなふうに誤魔化して。
「私の家にもおいでね。いつでも大歓迎だよーっ。」
「うん、楽しそう。」
想像すると笑顔が零れてくるぐらい、楽しそうな時間。
「あーっ。
夏休み、早く来ないかなーっ。」
「まずは大貴の誕生日でしょ。」
「それもそうだねっ。
あーっ、楽しみだなあっ。」
「幸せそうだね。」
「しあわせだよ〜っ。」
そんなふうに笑いあいながら2人で帰る私たちには、
これからどんな悲劇が起こるかなんて、想像出来るはずがなかった。
