優の手が髪を梳く。その感覚に胸が騒いだ。
「着物は大体アップヘアーが合うんだ、そうだな……一般的に
おだんごにしよう」
そう言って優は、髪を結いはじめた。
「本当に何でも出来るんだなお前」
あたしの言葉に優は小さく笑う。
「そんな事ないよ、俺は…天王寺財閥の御曹司に必要な事をやってきただけだ」
優……。
時々優は、今みたいに寂しげな顔をする。それは決まって、家の話をする時だ。
「優が御曹司だったから、あたしはお前と出会えたんだ」
あたしの言葉に、優は目を見開く。
最近、優のポーカーフェイスが崩れた所を見る事が多くなった。
この言葉は素直に出た言葉だ。純粋にそう思った。優に、今の自分を否定してほしくないって思った。


