「しじら織というのは、織物の表面に縦方行の縮み、あるいは凸凹を出した物の総称なんだ」
そう言って優は、着物の裾を合わせる。
優の話なんか耳に入ってこない。優の体温に、ドキドキして、それどころじゃないのだ。
「着物は他にも博多織とか、色んな種類があるんだよ」
そう言ってキュッと帯を締めた。
「…はい出来た!」
そう言って優はあたしの肩に手を置く。
「お、お前何者だよ…。着物の事なんて、男は知らなくてもいいだろ?」
恥ずかしさを隠すように、、話題を変える。
いつものあたしなら、優を突き飛ばそうとするはずなのに…。どうして、それが出来ない…?
「知っていて損する事なんか無いんだよ。着物は女性への贈り物にもなるからね、知っておかないと」
その言葉に胸がズキリと痛む。
他の、誰かに向けた言葉なのか?って、あぁ…今日のあたしは、少し変だ。
優が誰と居ようが、あたしには関係無いはずなのに。
「次は髪だね」
そう言って優はあたしを椅子に座らせた。


