御曹司ってのは、今一分からねぇな。
「優とあたしは、本当に正反対の生活してんだな。ここまでくると、わりと面白くなってきたぞ」
「俺だって、菜智の生活は未知に溢れてる。見てて飽きないよ」
クレープを食べながら歩く帰り道。優は終始笑っていた。
「しばらくは、お前の学校通うんだし、明日こそは優が学校案内しろよ?」
「もちろんだよ、今度は俺がエスコートする」
そう言って、優はあたしの前に立ち、あたしの左手をとった。
「今日は、本当に楽しかった。俺は久しぶりに、笑えたんだと思うよ」
ーチュッ。
「なっ!?」
手の甲に口付けるとか、王子様かー!!
「ありがとう、俺のプリンセス」
「プリンセスとかやめろ!!あたしは、そんなキャラじゃ…」
「菜智は、俺のプリンセスだよ」
真剣な瞳であたしを見つめる優に、あたしは初めて、目を奪われた。
こいつ、こんな風に真剣な顔もするんだな…。
「菜智、また俺を連れ出して。その時だけ俺は、自由になれるんだ」
優は、お金があっても、容姿が良くても、心が満たされてないんだ。
「なら、今度は朝、歩いて登校しよーぜ。見せたい景色が、いっぱいあんだよ!」
そう言って笑うと、優は嬉しそうに頷いた。
明日はどこを歩こうか。優の嬉しそうな顔を見ながら、自分の心も温かくなるのを感じるのだった。


