放課後、リムジンに乗ろうとする優を、あたしは止めた。
「菜智?まだ帰りたくないの?」
「違う、帰るなら、歩きだ」
そう言って優の手を無理矢理引いて、校門を出る。
「え!危ないよ!!俺、御曹司だよ、変な奴らにまた襲われるかもー!怖いなー」
「うざい」
まるで、か弱い乙女のように、あたしの腕に抱きついてくる優を、あたしは睨んだ。
「それなら、あたしがいるだろ。問題ない」
だてに総長やってない。
何人相手だろーが、飛び道具だろうが、倒せる自信ならある。
「でも、何で歩こうなんて思ったの?」
優は不思議そうにあたしを見つめた。
「車からじゃ見えない気色が見えるだろ、空とかさ」
あたしが空を指差すと、優はならうように見上げた。


