「………久々だな…」
あれから、事情聴取やらで天王寺家に帰ってきたのは、夜になってしまった。
部屋は、優と抱き合ったあの日から何も変わっていなかった。
「とりあえず風呂だ」
そう言ってシャワーを浴び、ベッドに横になる。目をつぶると、今までの事を思い出した。
色々あったな…。
不正の証拠は、警察に全て渡した。
霧夜もこれから色々大変だろうが、優がついていれば心配無い。
これは後から聞いたのだが、優は近々、正式に天王寺財閥を継ぐらしい。
「…………」
あぁ、眠くなってきたな……。今日は頑張りすぎた、もう休んだって、罰は当たらないだろ……。
意識が、落ちかけた所に、扉がノックされた。
コンコン
「入るよ〜」
そう言って入って来たのは優だった。
「ん、優…?ノックしてすぐ入って来たら、ノックの意味ないだろ…」
こっちの返事を待てっていつも言うのに。
あたし言葉に、優は笑う。
「まぁまぁ!気にしないでよ。それより…」
そう言って優は、ベッドに横たわるあたしに歩み寄る。
「もう寝ちゃうの?」
優は、あたしの頬を優しく撫でた。
それが心地よくて、また眠たくなってくる。
「それ、眠くなる……」
「だーめ、菜智。まだ、俺の事かまって」
そう言って、今度はあたしの唇を親指で撫でた。
「優……」
「ねぇ、菜智。俺たちって、相当衝撃的な出会い方だったよね」
その言葉に、あたしは笑う。
「まぁな。しかも傘がいくらだっけ?すんごい高い傘だったから、交換条件で優に誘拐された」
「誘拐ね、間違ってないよ?だって、あの傘、500円だもん」
「ええっ!?」
そこで、一気に眠けがぶっ飛んだ。
あ、ありえない!!あたしはそれを馬鹿正直に信じて、優の言いなりになってたのか!!