「そうかいそうかい。それは大変だ、ゆっくり休んでくれ」
そう言って繁信はあたしの肩に触れた。
「霧夜を頼んだよ」
そう言った繁信の目は、欲望に満ちたくすんだ色をしている。
「えぇ、それでは」
よし、これで繁信の書斎の場所は分かった。後は折を見てデータをハッキング出来れば…。
頭の中で計画を立てながら、お辞儀をして、部屋を出ようとする。
「私も失礼します」
霧夜はそう言ってあたしを追いかけて来たと思ったら、あろうことか、肩を抱いてきた。
「離して、一人で平気ですから」
「菜智お前……」
霧夜は何か言いたそうにあたしを見つめる。
「…体調が優れないので、部屋に戻らせて頂きます。旦・那・様?」
精一杯の嫌みを込めて、霧夜に微笑んでやると、霧夜は一瞬息を詰まらせた。そして…。
「……………お前…」
霧夜の声が震えている。
な、なんだ!?まさか怒って……。
「では!!失礼して!」
爆発する前にと、あたしは走り出した。
「ぶっ、くく!!体調が悪い…ね。元気じゃないか」
そんな霧夜の声にも気がつかないまま、全力で走り、何の部屋か分からないまま近くの部屋に駆け込んだ。
バタンッ
「ふぅーーっ…」
逃げきったぞ…。扉に背中を預けて、空を仰ぐ。
「それより………」
ここはどこだ?見る限りだと…。
「誰かの部屋か…?」
それなら丁度良い。
「何か手がかりになるものは………」
部屋を物色し、たまたま見つけた机の上の書類に目を通す。
「これもこれも……関係なさそうだな。はぁ〜……」
何の手がかりにもならないな。
しばらくその部屋を物色していると、部屋の前で声がした。
「まずいっ…」
とりあえず机の下へと隠れる。
ガチャン
その後すぐに部屋に誰かが入ってきた。


