優side
「どういう事だよ?」
親父の言葉で俺の頭は真っ白になる。
朝、目が覚めるまでは、菜智と一緒に幸せな夢を見ていた。
でも、今はただ絶望しかない。
「菜智さんは東宮の正式な婚約者になるんだ」
天王寺財閥を助ける為に、東宮の元へ行き
婚約者になる…。
菜智がどうしてそうしたか、すぐに分かった。
「なんで…何も言ってくれなかったんだ…」
俺が……。俺が気付かなかったのが、いけなかったんだ。
霧夜は菜智を気に入ってた、考えれば分かったはずだ。
でもそれ以前に、菜智の傍にいたのに、俺は何一つ気づかなかった。それが許せなかった。
自分自身に、腹が立つ。
「親父は、何も関係ない菜智を売ったのか?」
何で、親父はそれを知ってて、菜智を止めなかったんだよ。
怒りを押し殺し、実の父親を睨みつける。
「………そうなるな」
親父は何も言わなかった。言い訳をするでもなく、それを認めたのだ。
「………っ!!」
ドガッ
俺は親父の顔のすぐ横の壁を渾身の力で殴った。
「菜智は…何も関係ないだろ!!天王寺家の誇りはどうしたんだよ!!」
そんなんで生き残って、何が……安泰だよ…。
「天王寺家を…部下を守る為ならなんでも利用する。それが主の勤めだ。今回の事は後悔していない、私は菜智さんを信じている」
親父の言葉に、眉をひそめた。
「………信じる…?」
その言葉に親父は頷く。
「どういう意味だ?」
まるで、何かを知っているかのような口振りだ。菜智と、何か話したのか??
「お前に話す義理は無いな」
そう言って親父は俺に背を向けて扉へと歩き出す。
「待てよ!!親父!!」
俺の叫びも虚しく、親父は部屋を出て行った。
「…………くそっ…何なんだよ…」
俺の知らない所で、何かが起こっている。
何がどうなってんだ…。
「…菜智……お前…何してるんだ…?」
今すぐにでも会いたい。あんな、危険な男の所にいるなんて、考えるだけで、頭がおかしくなる。
「絶対……取り返す…何を奪われてもいい。でも…お前だけは……」
誰もいない部屋で、俺は小さく呟き部屋を出た。するべき事をする為に……。


