「そして三つ目は…あなたを渡して欲しいそうなんだ」
その言葉にあたしは目を見開いた。
……なんだって…?
まさか、これから自分が出そうとした苦肉の策が、今出されるなんて…。
「私も、なんて菜智さんなのか、詳しくは分からないんだ」
そう言って豊さんは俯く。
それは…絶対あの霧夜って奴の仕業に違いない。だとしたら、あたしはそれを逆手に取ろう。
「…あたしに、どこまでの価値があるか分からないけど…。あれもこれもって、わりにあわないですよ。あたしだけじゃ不服ですか?って啖呵切ってきます!」
「……………!?」
あたしが豊さんに宣言すると、豊さんは絶句して固まった。
「私…『姫龍』という族の総長なんです」
「総長!?君がかい??君は、どこからどう見たって、可愛らしいお嬢さんじゃないか!」
豊さんは驚いたようにあたしを見つめる。
「族っていう男臭い世界の中にいたあたしの前に、優が現れたんです」
綺麗な世界とは似ても似つかない、喧嘩ばっかりの世界。そこから、優はあたしを連れ出した。
それなりに仲間との生活は楽しくて、充実してた。今も、それは変わらないけど…。
「優の生きてる世界は、見たこともない不思議な世界のようで、そこでお洒落したり、作法を習ったりしたら、また違う自分に会えたんです」
優があたしに新しい道を、示してくれた事、本当に感謝してる。
「優はあたしにとって、新しい夢だった」
もっともっと、知らないことを知りたいって思えた。あたしの夢そのものだ。


