「あぁ、そうだ。朝早くに申し訳ないね」
豊さんはそう言って頭を下げた。
「いえ、お気になさらず、どうしました?」
あたしの言葉に、豊さんは真剣な顔つきであたしを見つめる。
「…実は……今回東宮と合併するにあたって東宮から三つの条件が出された」
三つの条件……?
「一つ目は天王寺財閥が、東宮財閥の下で働く事。二つ目は天王寺の所有する会社の半分以上を東宮に渡す事」
「…それは………」
天王寺財閥を潰す事と同じだ。理不尽すぎる、汚い奴らだ。
「事実上の乗っとりだ。それでも私達には、その話を承諾する事しか出来ない。私達の下には、沢山の部下達がいる。彼らの為にも……。それが例え法を無視し、犯罪に関与していた財閥の仲間になるとしても」
その言葉に耳を疑った。
東宮財閥は、犯罪に手をつけてるって事か!?
「それなら…なんで、訴えないんです!?」
法を犯してるなら、訴えれば東宮を潰すなんて容易い。なのに何故……。
「証拠が無いんだ。東宮の奴らは、金で証拠を完全に抹消する」
「信じられない。何でもするんだな、東宮財閥は」
………だから嫌なんだ。金持ちだの政治家だの、権力振りかざしやがって。


