「何してんの?」
今までに聞いた事のないくらい、優の低く怒りを込めた声。
それはあたしに向けられているのではなく、目の前の青年に
向けられていた。
「これはこれは…。天王寺様…お会いできて光栄です」
青年はわざとらしくお辞儀をした。そんな青年を見つめ、優は表情を険しくする。
「よくもまぁ、思っても無いことを」
優は皮肉っぽく呟き、あたしを強く抱きしめる。その手は少し震えているようにも見える。
「…………優?」
優の顔を見上げると、安心させるように笑顔を浮かべた。
「大丈夫だよ」
そう言って頭を撫でてくる。そしてすぐに、目の前の青年に視線を戻した。
「こんな所で何をしてるんですか、東宮 霧夜(トウグウキリヤ)様」
優の言葉に一瞬耳を疑う。
東宮……?
「………お前が…」
優の敵…?
天王寺財閥を飲み込もうとしてる奴なのか……?
「俺がどこで何をしようと、あなたには関係ないでしょう?」
霧夜はそう言って不敵に笑った。
「今日は兄の婚約パーティーに参加していただき、ありがとうございます。天王寺財閥は我が東宮財閥の手を取るという
事でいいのですね?」
霧夜の言葉に、優は罰が悪そうに俯いた。
「天王寺財閥が生き残る為には、この道しかない。お前も分かっているだろう」
東宮の手を…とるか…。そんなの…潰されたも同じだ。
「優…止めろ。そんなの手をとろうが、とらなかろうが、結果は同じだ」
あたしの言葉に、優は辛そうな顔をする。
「…今の社長は俺じゃない。親父は、東宮の手をとる道を選んだ」
優の言葉にあたしは、目を見開く。
「本気……か…?」
そしたら優は…?天王寺家はどうなる?
「……っくく……。結局…権力の前に勝てるものなんて、無いんだな……」
笑ってはいるものの、その笑顔は、作り物のように思えた。さっきのほうが、よっぽど……。
「……………」
優は何も言わずに、拳を握りしめていた。


