それはある日の朝優が放った一言から始まった。



「菜智…起きて……」


頬に感じる温かさ、誰かの手みたいだ…。



「起きないと……キスしちゃうよ……?」


ーカッ!!

あたしは目を見開き、跳び起きる。



「今…鬼の姿を見たような…」


優はあたしを見つめて、冷や汗をかいていた。



「…何だ?」


あたし怪訝そうに優を睨みつける。


「いや、あぁ、そうだ」



優は思い出したように、一枚の紙をあたしに差し出した。



「なんだ……?」


その紙をまじまじと見つめる。どうやら何かの招待状のようだ。


「…婚約パーティー?」


主催者は……東宮財閥?



「東宮財閥は天王寺財閥とライバルなんだよ」


優はそう言って大きなため息をついた。



「ライバル?ならなんで招待状なんか送ってくんだよ」



敵なんだろ?なのに招待状なんか送ってきやがって…。


「果たし状の間違いじゃないのか?」


良い度胸だ、やってやろうじゃないか。あたしは腕まくりをして立ち上がった。