「…ふーん、良かった」


そう言って優は妖艶に笑う。


な、なんだ!?なんなんだよ、その目は!!


ードキンッ。


「なんだ…よ…」


今までに見た事が無い妖艶な笑み、胸がざわめく。獲物を捕らえるような瞳、声が上手く出ない。



「菜智の初めては…全部俺が貰うから…」


そう言って優は、軽くあたしの髪を引っ張った。


「お、おい!何す…んっ!?」


その瞬間、唇に温かく柔らかい感触を感じる。それが優の唇だと気付くのに、時間がかかった。


「んっ…ふぁっ…!!」



一瞬息を吸えるように、優は唇を離したが、あたしの後頭部を押さえ付け、再びその唇を重ねた。



前には運転手がいる。

いくら空間がシャットアウトされていても、ガラス張りなんだ…。こんなの見られたら…。



「……声、抑えないと…聞こえちゃうよ……?」



唇を寄せたまま優は小さく呟く。


「ふざけるな!!」


ーバキッ。


「…ぐふっ………」


あたしは、優を思いっきり殴った。



「ぜー…はーっ…」


息を荒げ優を見下ろすと、優はそれでも笑っていた。


本当の変態か!?


「菜…智……それはないよぉ……」


そう言って気絶した優を、あたしは睨み付ける。


「一生…寝てろ……」


お返しだ…この変態野郎が…。


あたしは小さく微笑み、優のおでこに口づけた。