「……………」
「……………」
紀美代さんと朔に見送られて、天王寺の豪邸まで車で送ってもらっている。
なんというか……気まずい…。
昨日とは少し違う気まずさだ。さっきの事を思い出すと、顔が熱くなる。
「………………菜智」
不意に名前を呼ばれ、顔を上げると穏やかに笑う優と目が合う。優はゆっくりとあたしの膝の上に頭を置いた。
「なっ!?………」
驚いて優を見下ろすと、優は小さく笑った。
「…………ここから菜智を見るのは、初めてだね」
優はそう言って、あたしの髪を自分の指に絡めた。
「あ、あたりまえだろ!!あたしは生まれてこのかた、一度だって膝枕をした事はないからな」
男なんて……、そう認識したのは、お前が初めてなんだよ。前代未聞だ。