待ち合わせのお店は個室タイプのイタリアンレストラン。
さっきLINEで『到着した。待ってる』って連絡が入った。
うわ。めっちゃドキドキ。
課長とツーショットで食事だもの。
今日の課長は午後から本社で、そこから直帰って書いてあった。
待たせたかな。
小走りで私もお店に到着。
青の洞窟をイメージした幻想的なレストランは、予約待ちで有名なお店。
そこを簡単に抑えるって凄い人だな。
店員さんに案内されて奥に向かう。
ドキドキよ沈まれ。
落ちつこう私。死神の顔でも思い浮かべよう。
今朝の出来事を思い出す。
『今日は晩ご飯いりません』
手作りのお弁当をもらい
出勤前のどさくさに紛れて宣言した私。
『どうして?』
怖い怖い。目が怖い。
『ずっと憧れてた平野課長に食事を誘われました』
一気に言うと『ふーん』って言われた。
ふーんって何さ。
『この半年で私は恋をします。思い残す事がないようなドキドキする幸せな恋をします。見守っていて下さい』
大きく私は死神に言い、逃げるように部屋を出た。
いつも私の行動が気に入らないようだから。逃げるが勝ち。
恋愛ぐらい自由にさせて下さい。
うん。少し落ち着いて来たぞ。
そして通路の端々にある、洞窟の入り口っぽく作っている部屋のひとつに平野課長の姿。
「すぐわかった?」
「はい」
上着を脱ぎ、ネクタイを緩めて座る姿はプライベートの課長。
今夜は私が独占。
あぁどうしよう。またドキドキしてきた。



