なれるものなら、すんごい美人になってみたいな。
肌も綺麗で手足がスラッとしたモデル体型。
誰もが振り返るくらいの美人がいいな。
それとお金だよね。
値札を見ないで買い物を一度してみたい。
ランチに好きな物を食べたい。
いやランチって……スケールが小さな私。
庶民だわ。
でもね。でもね。
いきなり顔が変わって、服とかゴージャスになったら変だよね。
みんなビックリだよ。
整形疑惑と宝くじ疑惑が広がるだろう。
いや待てよ
お金はあるんだから
仕事をスパッと辞めて海外とか行けばいいんだよね。
もう関係ないもん。仕事しなくていいし。遊んで暮らせばいいんだよ。
全くの別人として生きる。
でもね。でもでも。
きっと死ぬ前に家族に会いたい気がするの
そしたら顔が変わっちゃマズいよね。
いや、家族に会う時は前の顔になってるっていう条件にすればいいの?
なんか……混乱。
「まだ半年ありますから」
私の心を見透かすように男はクールに言い放つ。
「私からすれば半年しかない」
半年なんてすぐ終わる。
だからとりあえずお金は必要。
金額はどうしよう。あればあるほどいいけれど。
「魔法の財布を下さい」
勇気を出して
遠慮がちに可愛く言ってみると
「はぁあ?」ってすんごく嫌な顔された。
こんな可愛い例えはお嫌いらしい。



