「係長。あの」
「まだキスされたい?」
「違います」
「ほら遅刻するって」
「あ、それはヤバい」
今朝は驚きがてんこ盛りなので、いつもより時間がかかってしまった。
私達は流れるように改札口を通り過ぎると
遠くから
澄んだ綺麗な鐘の音が聞こえてきた。
何だろうこれ
とっても澄んだ音で心が洗われるような
そしてこれもまた
どこか懐かしく感じてしまう音だった。
駅でサービスで流してるのかな。
「ずいぶん遅かったな」
西上係長がポソッとそう言った。
遅かったの?新しいサービスじゃないの?
不思議そうな顔で係長を見上げたら、係長は柔らかな表情で私を見る。
その表情はとても優しく温かい。
ドS係長と恋に落ちるなんてアリ?
うん。
アリかもしれないね。
「係長のオムライス美味しいんですか?」
「僕は完璧ですから」
このドヤ顔。どこかで見覚えがある。
同じ会社だから係長には見慣れてるけど
このドヤ顔……あれ?
まぁいいか。
とりあえず
美味しい料理を一度ごちそうになってから
考えましょう。
【完】



