でも、俺が話す昨日の出来事には全く記憶にないらしく、キョトンとした顔をする。
もちろん俺のことなんて記憶にないし、昨日どんな会話をしたかも分からない。
あぁ、人に忘れられるって、こういう事なんだ。
この事に少し、恐怖と似た感じがしたけど、彩に気づかれないように平然を装って昨日のことを話した。
純太のこと圭のこと三輪のこと、そして蛍を見る約束をしたこと。
その話に彩は相槌を打ちながら真剣に聞いてくれた。
「あ、学校着いたらどうすんの?
職員室とか、寄ったりする?」
記憶のこともあるし、たぶん普通の転入生とは対応が少し違うと思って聞いてみた。
「うん、1度職員室に寄らないといけなくて」
へへっと笑いながら彩は答えた。
‥‥先生に、なんか言われんのかな。

