「おはよう」

私は、いつも通り君を起こす。

「……はよ」

君は掠れた声で、眠たげに目を擦りながら「コーヒー」と小さく呟く。

「ブラック?」

やっぱり、私はいつものように確認をして。

用意していたコップに、黒い液体を注ぐ。

それを、君は顔をしかめながら、それでも飲みほす。

「苦い」

ちゃんと、文句をつけて。

どう見ても、君はブラックコーヒーが苦手だ。

甘党だということもよく知っている。

一回だけ、聞いたことがあった。

何故、ブラックを飲むのか。

「好きだったんだ」

君は、そう答えた。

それ以来、私は聞いていない。