山崎さんと初めて会う少し前。
仕事が忙しく、滅多に帰ってこない親が、朝起きるとリビングにいた。
父は寝室へ入って行き、母は兄の海栗(カイリ)と話をしていた。
「海栗、また学年トップだったの。流石ね。」
当然、とでもいうように言った。
「あんたも少しは見習いなさい。」
私がいる事に気づくと、お決まりのセリフを吐く。
「…わかってるよ。」
わかってるけど…。
「ちゃんと勉強しなさいよ。」
「してるよ。」
「しても結果が出なきゃ意味ないでしょ。」
「でも、勉強はしてるって!」
ついムッとなって怒鳴る。
「だったら結果を出してから言いなさい!」
母はいつもこうだ。
結果にばかりこだわる。
それまでの過程など、興味はないのだ。
結果がよければそれでいいといつも言ってる。
その考えが、私は嫌いだ。
腹が立ってご飯も食べずに家を出た。
途中、兄が何かを言っていたが、どーだっていい。
何でもできる人はいいよな。
正直、兄を尊敬はしている。
頭いいからって気取ってないし、私にも普通に話し掛けてくれる。
でも、どんなに勉強したって兄の様にはなれない。
結局私は欠陥品…か。
悔しい。
兄みたいになれない自分にどうしようもなく腹が立つ。
「結果…か。」
呟くと余計に実感して辛くなる。
あー、ヤバイ、泣きそう。
泣いたらダメな気がした。
それでも流れてしまった涙を隠す様に、学校への道のりを走った。

