初めて会った時、君は泣いていた。



それは1年程前、まだ俺が高校2年生で君が1年生だった頃の、ある夏のお話。


あの日は、まだ知らない君の心とは対照的で、とても天気のいい日だった。


熱い陽射しの所為か早く目が覚めた。


いつもより早く家を出ると、その瞬間。



ーードンッ


「あっ…と、ごめん。大丈夫?」

女の人にぶつかった。


俺と同じ制服を着てる。



間一髪で抱きとめ、大丈夫?と聞くが、女の人は何も答えない。

俯いたままだ。


掴んだ腕は華奢で、疲れさえ感じられた。


体制を正し腕を離すと、俯いたまま横を通り過ぎる。



「…っ!待って!」

また、腕を掴んだ。


今のは、見間違いなんかじゃないはず。



ねぇ、なんで…

「泣いてるの?」


足を止めた彼女は、振り向き、やっと顔を上げた。


見た事ない顔だな、俺より年下だろうから、1年生かな?



「あ、さっきぶつかったのが痛かった?」

濡れた頬、腫れた瞼、涙を零す瞳。


なぜかその瞳から、助けを求められてる気がした。


無言で首を振り、暫くしてやっと第一声を発した。


「ちがう……。」

小さくて、震えていた。


まるで独り言かの様に、そっと呟いていた。



ーー“助けて”。


そう聞こえたのは気のせいかな。