「決まってるだろ、100%俺様の実力だぁっ!」

 有頂天の大神は手に負えない。

 燈子はそそくさと向こうの方へ逃げていった。

 大神と熊野。
 面と向かって顔を付き合わせるのは、あれ以来久しぶりだ。

「なあ、大神よぉ…」
 
 燈子の後ろ姿を名残惜しそうに見送ると熊野は、大神の肩に肘を乗せ、ブワッと瞳を潤ませた。

「うげっ、何だよ気持ち悪い」
 鼻先まで顔を近づけた熊野から、大神は出来る限り遠ざかる。

「心配なんだよ、俺はよぉ。
 はっきり言ってオマエの極端な性格は問題ありまくりだからな!
 特に女関係。
 テメエ今回、ヤケクソになって手当たり次第やっただろ?」

 大神の目線が宙にさ迷う。
 熊野はさらに、ずいっと顔を近づけた。

「なあ、頼むから。
 彼女、絶対に不幸にするなよ。…でないと俺が諦めた意味、ないんだからな」

 大神はフッと顔を緩めた。

「…分かってるさ。なあ、熊野。
 俺はな、全世界の女性をシアワセに出来る自身がある」

 ダメだ、こいつは。

「おいコラッ!大神」
 熊野は、彼の左耳をぐいっと引っ張った。
「痛っ…何するんだよっ」

「ウルサイ…お前、一つ俺に約束しろ、____________」

 熊野が耳に囁いた言葉に、大神の酔いが、サーっと冷めていく。

「えっ、ちょっと待て。それは…いくら何でも…」

「いいな?男同士の約束だ。
 破ったら俺は…絶対にお前を赦さない」

「何だよ、そんなのやだよっ、俺が今まで、どれだけ我慢してきたと思ってるんだ。嫌だからな、絶対に……ヤダヤダっ!!」

「ダメだ!!
 破ったら絶交。オマエの恥ずかしい秘密、社内にに全部バラす」

「くっ、卑怯な…」


 この時二人の交わした約束は、後の燈子に幸せと災難を同時にもたらすのだが、今はまだ、知る由もない。


 ともかく、騒がしさの中送別会は終了し、明日はいよいよ、新地に向けて、出発する。