は……?

「ああ、あれね。間違いだったのよね~、あら?言わなかったっけ?」

 はああああっ?!

 しれっと抜かした松嶋七緒に、彼は軽い殺意を覚えた。
 
「はっはっは…何を言い出すかと思えば…勿論支社は任せるつもりだよ?
 何、奥さん?内規?
 (そんなキマリつくったかな…)
 ああ、いや何でもない。
 別に、構わないよ。好きな子連れて行っら?」

「社長…そんな…軽いノリで…」
「ん?何か言ったかな」

 すっかり脱力した大神の恨み言は、社長の一睨みで封じられた。

「イエ…何でも……ございマセン」


 “失礼しました”
 ヒョロヒョロと波に揺れるワカメのように左右にフラつきながら退室してゆく大神を、最後に社長は呼び止めた。

「大神君」
「は?」

 最後に社長は、鋭い視線とともに不思議な一言を放った。

「君は……思ったよりは見所がある。九州では必ず結果を出したまえ。
君は________ 」

「? はあ…」


 くっそおおお、アイツら…
 ヒトの純情を弄びやがって……
 俺の、俺の2ヶ月間を返せえぇ!!
 

 来るときと同様、またもやギリギリでエレベーターを閉じられた大神秋人は、溢れる涙もそのままに、階段を、2段飛ばしで駆け降りていた。


『結果を出せ』
 だと?
 ああ、出してやるともさ。

 でもそのためには、どうしてもあのコが必要だ。


 社長が最後に放った言葉。
『君はいい“友人達”に恵まれた。彼らに免じて…ね』

 何だそりゃ。
 サッパリ意味が分からないが、今はそんなことどうでもいい。


 兎に角一瞬でも一秒でも早く、あのコのいる場所に辿り着きたい。