己を鼓舞し、キッと顔を上げた。

「支社の方は、お任せください!…ただ、…その…連れていく人は。
 つまり、伴侶になる人の決定は…ワタクシに一任させて頂きたいと!
そのように考えておりますっ」

 45度に礼をする。最後まで言い切った。

 上目づかいで顔色を窺う。

「……」

 社長は、“んっ?”と眉を潜めた。
 その顔色が、みるみるうちに曇ってゆく。

 冷や汗が、止まらない。

 「……松嶋くん」

 社長は徐に、傍らに控える秘書兼愛人に、顔を向けた。

 
「…君、言ってなかったの?」 


 場を、沈黙が支配した。


 第一秘書、松嶋七緒が、伏せていた睫毛を重たげに上げた。


「……忘れてた。エヘッ」