__あれから、何となく気まずい__

 帰ってすぐ、ラインでたくさん謝って、彼女もすぐに返してくれた。

 が、面と向かって謝れないまま、出張に出っぱなしでもう1週間。

 明日はバレンタイン・デーで、久々の本社勤務だというのに、仲直りの誘いさえ、かけられないままでいる。

 部屋に1人、熊野は鬱々としていた。

__らしくない。俺は一体、何を焦っていたんだろうか。どう見てもがっつきすぎで、彼女が引くのも無理はない__

 熊野の頭にはずっと忘年会の日に、彼女に言われた事があった。

__大学の時。
 本気で好きになって、結婚しようとまで考えた彼女に浮気をされ、それが赦せずに、別れた。
 別れ際の彼女が言った言葉は『寂しかった』。

 結婚するまではプラトニック。
 骨の髄まで体育会系だった俺、 ”我慢は美徳” と考えていたが、トーコちゃんに言われてふと思った。

 あの頃俺は知らないうちに自分の理想を彼女に押し付けていたのかもしれない。

 もう、無くしたくはない。
 そうか、だからだ。だから俺は焦っていたんだ___
 
 ハァ。
 熊野が小さなため息をついたすぐ後。
 ピロリロリン♪
 メールの着信音がした。

 卓上の500ml缶を飲み干してから、大儀そうに画面を覗く。

 と…… 

『熊野さん、明日………』

 やった!
 燈子からの、誘いだった。