なんだ、そっちかよ。
 大神の、高揚した気分は急速に冷えていった。

「ああ…随分と早いじゃないか。
 まだ内々だけどな。支社長だぜ?凄いだろ」
 
「主だったウワサは、オンライングループ『裏・会社のウワサ』で流れてますから。
…それで…あの」

 燈子は、俯き加減の顔をぱっと上げた。

「あの___松嶋さんと結婚するっていうのも?」

 大神は一瞬言葉に詰まった。
 ややあって。

「______うん。
 何だ、そんなことまで流れるんだな…
 まあ、俺も年貢の納め時ってことか」

 彼が空虚な言葉を返すと、彼女は奇妙に顔を歪ませた。

「で、でも!
 課長は以前おっしゃいました。
『松嶋さんは、ダミーなんだ』って」

 彼女は、怒ったようにギュッと眉をひそめている。