と。
「カチョーー…オオカミかっちょ~」
 間延びした高い声とともに、長い廊下の向こうから、パタパタと軽快な足音が近づいてきた。

「あ~、いたいた。そろそろ中締めのアイサツにしましょう。課長補佐が泣き出しちゃって、もう大変なんですよう」

 あ、赤野。

 やたらとハイテンションな赤野燈子の登場に、場の空気はガラッと変わった。

「あ、ああ。これ終わったらいくよ」
 右手の煙草を少し上げ、格好をつけてはみたものの。

 次の瞬間、
 
 おおっ!

 大神の目は、傍らに立った彼女の胸元に釘付けになった。

 ラッキー、この位置だと谷間が見える。

「あの、課長…」
「ななな、なんだ」

__目線がバレたか__

 ビクビクしながら尋ねたものね、赤野は急にしゅんと項垂れた。

「九州の方に転勤になるって…本当ですか?」