…旅行は12月の第2週目の土日、任意参加で、予算の関係もあり、都心から2時間程度離れた温泉宿だった。
忘年会が旅行になったのは、実に5年ぶり。
宴会部長、赤野燈子。
こういう時だけ仕事が早い。
大神秋人が宴席にて、部下の苦労を労うべく、酒をついで回っていると……
「そりゃ、熊野さんがいけないんですって!」
「そうかな~」
向こう側から、やたらとハイテンションな声が聞こえてくる。
大神としては、楽しそうな輪に入りたいところだが、課長の彼にはそうもいかない。
そうこうしているうちに、愚痴っぽい課長補佐に捕まってしまった。
適当に相槌をうちながら、目線はついつい彼女に向かう。
「そうれすよ~。 “ケッコンするまでは” って言われてもね、女の子の方だってね、“クマノさんに触れたいな~”とか、思ってる訳なんですよ、分かりますか?」
「そんなもんかなあ。
でもさ、女の子にとっては大事だろ?」
「古い!
そしたら彼女はね? “クマノさんに、エッチだと思われちゃう” って、気持ちを押さえちゃうでしょ?
そういうキビがね~、ウマイ人は解るんですよ」
「ウマイ人、ねえ」



