「あらぁ…そこを上手くやるのが、貴方の役目、でしょ?キレ者の大神くん?」

 嘲るような松嶋の言葉に、大神はぐぅっと喉を詰めた。

「大体さ?
 私、子供には最初っから事情を話すつもりでいるの。
 まあ、最低限貴方の面子を立てて、世間体だけは演じてあげるけど?」

 松嶋は爪を磨く手を止めて、大神に向かって優雅に微笑んでみせた。

「言っとくけど私、北九州になんて一緒に行くつもりはないからね」
 
「そんな…」

「あとね、私に手ェ出したら。
……コロすから」

 彼女得意の、艶然とした凄味のある微笑。

「ひ…」

「じゃあね、お休みなさ~い♪」

 自分の言いたいことだけ言うと、ダブルベッドのど真ん中、いっぱいのスペースに仰向けに寝転んだ。

 スヤスヤと寝息を立て始めた松嶋を尻目に、大神はすごすごとシャワールームに向かう。

 ヒドすぎる。
 いつもながら、俺のプライドはズタズタだ。


 …やはり俺は、この女が死ぬほど苦手だ。