あのキスも、掴んだ手も、あたしも見つめる瞳も、『柚子』って呼ぶ声も。 全てが、優しかった。 この曖昧な関係が聡くんにとって遊びだったとしても、それで十分だなんて思った。 たぶん、あれが素であろう聡くんの雰囲気や口調もすぐにわかった。 聡くんも何かを抱えてる。 抱えているものは多分違うけれど、似たようなあたし達にはこれくらいが丁度いい。 そう、思った。 だからあたしは最後、抵抗しなかったんだ。...できなかったんだ。 「...柚子?」