「プリンセス・・・」



レノンが去ると、恐る恐るロイが呼びかける。
梨乃がロイを見上げ、フッと微笑みを返した。



「本当に、よろしいのですか」

「・・・なにがでしょう」



本当は、その意味が解っていた梨乃だったがあえてわからないふりをする。
ロイにもそれがわかり思わず口ごもるが、意を決して言葉をつづけた。




「本当に、これでいいとは私には思えません」

「プリンセスとして、選ぶべき道だと。間違っていないと、思ってます」

「それは、プリンセスとしてですか。プリンセスではなく、梨乃さまとしてはどうなんですか?」

「―――お願い。惑わせないで。もう、決めたの。ここにいると決めた時から。私はプリンセスとして、皆を護りたいって」




グと手を固く握りしめ、梨乃は振り切るようにそう言った。
プリンセスとして生きると決めた時から。
全てが思い通りにはならないとわかっていた。

振り切らねばならないことがあることも。


それが、どうしても納得できないことだとしても。