「プリンセスの様子は・・・」

「塞ぎこんだままです」



クロウはロイにそう答えると、梨乃の部屋の扉を見つめる。
傷はすぐに手当てし、十数針縫うほどの怪我だったが命に別状はなくもう部屋に戻っている。



「プリンセスをお連れしたのは、やはり軽率だったでしょうか」

「・・・ですが。納得はしなかったでしょう」

「まさか、プリンセスの声も届かないなんて・・・。あいつは、なにを考えてるんだ」




ロイが憤りを見せる。
誰よりも、梨乃の事を考えていたように思えた。

それなのに。
いや、それだからなのか。




「取引をしているんです。簡単には破棄には出来ないとわかっているのでしょう。その覚悟のうえで、身分証も捨てていったんでしょうから」

「戻ってくる気は、本当にないと?」

「覚悟は決まっているように思います」




握りしめた拳。
悔しい思いは、誰も同じ。