「わ、たしもっ、こんな馬鹿な私と一緒にっ、いてくれて、ありがとう」

 背伸びをしながら出来るだけ、左耳に口を近づけてそう言った。

 およそ7センチの距離。

 聞いてほしい、言葉だから、大事な言葉だから。

 もう、言葉ですれ違うのは嫌だから。

 遥の片耳が聞こえなくなって改めて気付いた。

 気付かされた。

 言葉には力があるんだって。

 だから、私は。

「あーあ、泣かせちゃった。そんなつもりなかったのにな」

 柔らかく、優しく微笑むその表情に一層、涙腺が緩んでくる。