「もう1人の記者さんですよね?」
「うん。沙羅は正樹君になら何でも話すんだ。
俺はその時たまたま側にいたら話を聞くってだけ。
まあ正樹君も俺にとっては弟みたいなものだけどね。
俺が自分の過去を知らないものだと思ってる。
必死に隠してるけど、そういうところが可愛いんだよね。」
仁の顔は笑っていたが、美那はそれに違和感を感じて首を傾げた。
「……淋しくないんですか?妹と弟みたいに思ってる人から、そんな態度とられて。」
「そんな態度って言っても、聞いたらちゃんと答えてくれるだろうけどね。
俺が聞かないだけ。」
仁は自分が持ってきたスーパーの袋からアイスを1つ取り出し、それにかぶりついた。
「それで良いんだよ、俺は。2人ともいざという時は頼ってくれるしね。」
「そんなものなんですかね……」
「そんなものなんですよ。」
2人の間にしばらく沈黙が続いた。
撮影も少し落ち着いたようで、照明が消えて辺りは少し暗くなった。
「あ、そうだ。」
突然仁がポンっと手を打った。
「美那ちゃんって呼ぶね。良いでしょ?」
「へ?あ、はぁ……良いですけど。」
美那の驚いた顔に仁はまたニッと笑った。
「ねぇ、Starlightのマネージャーの人、ほら名前なんだっけ!えーっと……」
「瑞希さん?」
美那は名前を教えたことを心の中で瑞希に謝った。
こんな軽そうな人に名前を教えて良かっただろうか。
「そう!瑞希さん!!良いよなぁ。あの人美人だよなぁ。」
仁はキョロキョロと辺りを見回したが、今日は瑞希は撮影を見に来ていなかった。
「芸能界にいたこともあったらしいですからね。」
しまった、と顔をしかめた美那の横で仁は小さくガッツポーズをした。
「よっし!!今度声かけてみよっと!」

