『夢見ヶ丘芸能学園 入学式』




そう書かれた板が校門のすぐ横に掲げられている。



でも生徒や教師らしい人はほとんどいない。



いるのは大勢のカメラを持った人、スーツを着てマイクを持った人、その他大勢。



みんな校門の前で首を長くして校舎を眺めている。




「ねえ、入学式いつ終わるの?早く見たい!」




「有名な芸能人がいっぱい在籍してる学園だもんね!制服姿とかレアだよ~」




「だよね!ここらで有名な芸能科ってここだけだから、集まっちゃうんだよね!」




そんな会話があちらこちらで聞こえる。



そんな中1人の男がハハッと声をあげて笑った。




「なぁ、正樹君。楽しいだろ仕事!」




「なーにが楽しいもんですか。そんなこと言ってるから先輩彼女できないんですよ。」




その横で黒縁メガネをくいっと元の位置に戻した正樹がため息をつく。



「おまえだっていないじゃないかよ。」




正樹は細身で背が高く、他の人よりもほぼ頭1つ分大きい。



報道陣の中に紛れて入学式の終わりを待つ2人は同時にため息をついた。




「…まあ、俺達窓際だからな。」




「ですよね~。なかなか大きい雑誌社で2人の部署とか僕初めてですよ。」




「仕方ないだろう。我が会社は社会部が8割を占めてるんだから。その中で俺達個人のを出させてもらってるだけでも感謝しないと。」




『それでは、これをもちまして入学式を終了いたします。生徒の諸君は…』




そんなマイクの声が聞こえてきて軽い悲鳴が起き、2人は姿勢を正した。



「いいか、正樹君。この学校で俺達が追いかけるアイドルを決めるんだからな。」




「分かってますよ。その子達が有名になってくれたら、俺達の存在を少しは会社にアピール出来ますもんね。」




「その通り。そのためにはまず、絶対に有名になるだろう人物を見つけないと…」




「うわぁ!」




その言葉が終わらないうちに、隣で緊張していた正樹が突然叫び声をあげた。