あまりに理想すぎて、逆に恐くなる。

カズエが気にしていたことが、なんとなく理解できるようになってきた。

これだけ私に合わせてくれてるって、きっとシュンキにはどこかに歪みができていやしないか。

これだけ優しくできるなんて、何か私にやましいことをしてるんじゃないか。

人生きれい事ばかりではないこともわかっている。

誰でも全てさらけ出せない他人には見せられない本当の自分がいることも。

シュンキのきれいな横顔を見つめながら、自分自身はどうなんだろうと考えた。

私がシュンキに素の自分をどれだけ見せてるんだろう。

もし、このままお付き合いが順調にいったとして、その先に結婚はあるんだろうか。

未だにその答えは出ていなかった。

ルノアール展はかなりの人で溢れていた。

あまりの人混みにシュンキを見失いそうになる。

その時、シュンキは私を振り返りさっと私の手を握った。

うわ。

シュンキの細くて冷たい指が私の手にしっかり絡んでいる。

手の先からジンジンする。

男の人と手をつないだのも本当に何年ぶりだろう。

全てが久しぶりすぎて新鮮だ。

大好きなルノワールの絵だったのに、全く集中できなかった。

たくさんの人の列に潜り込んで、ゆっくりとしたペースで鑑賞していたはずなのに。

途中、人気もまばらになった場所もあったけど、シュンキはずっと私の手を握っていた。

出口につくと、ようやくシュンキは私の手をほどいた。

私の手の平はしっかり汗が噴き出していた。

恥ずかしい-。緊張してるのばればれじゃない?手をつなぐっていうたったそれだけの行為だってのに。

出口についてからも恥ずかしくてしばらくシュンキの顔を見れなかった。