本校に入るのは初めてだった。


「広いな」


祐介が感心したように言った。


これでも広く感じるんだ。

さすが都会人。





「それにしても遅いですね」


ミーティングルームに案内されて、20分経っても相手は現れない。

私は、立ち上がった。


「飲み物買ってくる」



ドアを開けて表に出たとたん、そこに壁があった。


「ッと!」


とっさに壁のすき間に体を逃がした。




振り返ると、壁だと思ったのは大宮新のカラダだった。


さすが体格いいなぁ。


大宮よりも、隣にいる和風美人の方がビックリした顔をしている。



「ドーモ」

と声をかけて、階段へ向かおうとした。



「おい」


低い声が私を呼び止めた。



「どこに行く?」

「…飲み物」

「戻れ。もうミーティング始める」



はあ?


「遅れてきたのは、そっちでしょ」

「だから、もう始めるんだろ」


あきれて大宮を見た。

見下ろされてるなんて新鮮。


ちょっとタレ目なくせに強い目力と、

柔らかそうな色の髪。

引き結んだ唇は、近くで見ると意外に厚ぼったい。


キャアキャア追いかけ回しているファンは、

このアイドル顔のオトコが、

とんでもなく傲慢なヤローだって知ってるのかな。