四月の校舎は、朝日で光輝いている。

聖ヒルデガルド女学院高等校は、生徒数100人弱の小さな学校だ。


校門を抜けたとたん、一斉に女の子たちの声が私に向かって来た。



「由梨絵さま~!おはよ~うございまーす!」



そちらへ向かって手を上げる。



キャーッという歓声。



入学して三ヶ月くらいで、ファンクラブが出来ちゃって、いまだに続いてる。

持ち回りで、お弁当も作ってきてくれる。

おかげで、すんなり生徒会長になってしまった。



昨日、あれからジョゼと服を買いに行って、店員さんに散々言われた。


「本当に、日本人ばなれしたスタイルですね~」




鏡に映る私は、身長175センチ。

広い肩幅、足のサイズは27。

スペインに行ったら、普通に「¡Hola!」と挨拶されてしまう顔の濃さ。

加えて、地黒。




ジョゼがそのことをママに伝えると、


「私の功績よ。絶対に仰向けに寝かせなかったし、イスの生活を徹底させたもの」


つんとアゴを上げてそう答えた。


ママは「うつぶせ寝がアブナイ」なんてことより、

娘を美しいプロポーションにすることの方が大事だったらしい。



昇降口を上がると、クラスメートのノドカが飛びついてきた。


「ごきげんよう!」

「ゴキゲンヨ」

「今日のミーティング、一緒に行きましょうね」



来月、3年に一度の『スポーツディ』というイベントがある。



聖ヒルデガルドには、系列校がもう2校あって、

『本校』と呼ばれる、共学の聖ヒルデガルド国際高校。

『フカミ』と呼ばれる、男子校の聖ヒルデガルド深見高校。



この本校チーム300人と、うちとフカミの混合チーム280人で、スポーツを通して交流するというイベントが、スポーツディだ。


大きめの体育祭という感じかな。



「実行委員になれて良かったわ。今年こそ、うちが主将をやるべきだもの」

「て、ことはワタシ?」

「当然よ!由梨絵ちゃんほどふさわしい人がいるわけないじゃない。フカミの会長は知ってるの。幼なじみだもの。アレはムリ」

「でもフカミなら、頭はいいんでしょ?」

「頭がイイだけじゃ駄目よ!本校は、あの大宮新(アラタ)が主将なのよ?」


ああ、あのデッカイ人か。

バスケ部のキャプテンやってる。

将来有望で、ニュースに取り上げられることもある。



「もう六連敗よ!今年こそは勝つんですからね!」


お餅のように白い頬を蒸気させて、ノドカが言った。

中学時代の友だちに似てる…


何年経っても、その思い出は苦い。