何も考えられない。
ただ踊る。
観客、総立ち。
みんなが一緒に歌い始めた。
まだまだ。
こんなもんじゃない。
最後のサビの手前に入った。
ドレスを脱ぎ捨てる。
祐介もパンツを脱ぐ。
地鳴りのような悲鳴。
最後はビキニ!
ソロに戻ってステップを踏む。
客席を見たら、超オカシイ!
女子は目を輝かせながらシッカリ見てるのに、
男子は顔をおおって、下を向いているヤツがいっぱいいる。
ナサケナイなー。
その時、舞台端にいる大宮が目に入った。
目を見開き、ただ唖然とした顔をしている。
どーだ!
ヨカッタ、地黒で!
祐介も体鍛えた甲斐があった。
すっごい引き締まってる。
もう敵も味方もない。
会場一体で、その歓声に持ち上げられるように体が動く。
最高に気持ちいい。
足が勝手にステップを刻む。
曲が………終った!
爆発するような歓声に、グラウンドが揺れた。
勝ったとか、負けたとか、今はどうでもいい。
もう満足!ただそれだけ!
祐介と抱き合った。
「やっ…た…!」
「や、やった…うん、やった」
それしか言葉がでない。
舞台から降りると、みんなにもみくちゃにされた。
アナウンスが流れる。
「それでは、両校!演舞の得点です!」
勝った!!
「おっしゃぁ!!」
祐介が珍しく大声を上げる。
「やった!祐介すごい!」
ノドカが早くも泣いている。
もう優勝したような騒ぎ。
先生まで跳び跳ねている。
思わず来賓席に飛び込んだ。
「ジョゼ!」
「Fantastic!」
ジョゼも大興奮だ。
祐介も来た。
ガッチリと3人で抱き合う。
ママはそ知らぬ顔をしているけど、その頬は緩んでいるような気がした。
ジョゼに訊ねた。
「『パパ』がいい?『お父さん』がいい?」
ジョゼが体を震わせた。
「oh,my god…」
何度もかすれた声で繰り返すと、
ママの差し出したハンカチで涙をぬぐい、
それを握りしめたまま、静かにママを抱きしめた。


