鋼鉄の翼―ゾフィエル

ヤツのヒレ翼が、ゆらりと動く。

それは、高速飛行への予兆。

瞬間から追走劇が始まる。

まるで空にいたずらな刺繍を施すように、モンストルは飛んでいく。

白筋が、軌道を追う。

逃がすものか。

ヤツが上昇すれば上昇、降下すれば降下、右へ、左へ、追撃する。
ピピピ……ピピ、ピピピ……。

ゴーグルのセンサーが、赤い十字照準をオートで合わせていく。

が、あとわずかというところで、モンストルは大きく横へ体をずらしてしまう。

一瞬見逃したかと思えば、真っ向から向かってきている。

三角頭部が、ガパリと口を開けた。

閃光が、夏空の陽光を真似たように、条を走らせてくる。

「くっ!」

風を一打ち、体をずらし、身を捻り急降下、反転して、頭上にモンストルを見る。

互いに、『眼下』に相手を捉えた形。

「腹ががら空きだ!!」

照準など、手動で間に合わせる。

ガトリング砲が、火を吹いた。

ガガガガガガガッ!!

しかし、着弾の寸前、またも瞬発力を活かしての回避を取られる。

閃光は、むなしく空に溶けていった。

(っ、肉弾戦に持ち込むか!)