「それより、里乃ちゃん。さっきの叫び声はどうしたの?」


事務所の備え付けのミニキッチンでお湯を沸かしている三木さんにそう尋ねられてギクッとする。


三木さんとナナさんのイケナイことを妄想してて叫んだなんて絶対言えない!!!


「なっ、なんでもないです!お湯ならわたしがやりますから三木さんは休んでてください!」


「そ?ありがとう。じゃあお湯沸いたら教えてね」


よかった。三木さん、わたしの叫び声に対して突っ込んでくれなくて。


「三木さん、コーヒーですか?紅茶ですか?」


「ううん、これ」


これ、と嬉しそうにビニール袋から取り出したのは近所のコンビニで売っているカップラーメン。


「三木さん、ごはん食べたんじゃないんですか?」


「食べたよ。船上レストランで豪華イタリアンのコース。だけどやっぱりお堅いとこの食事はどうも食べた気がしなくてね。里乃ちゃんも一緒に食べる?」


そういえば、三木さんのデートが気になって今日一日食事らしい食事は摂っていなかった。


「お供させていただきます」


「よろしい。じゃあデートプラン考えてくれた里乃ちゃんには濃厚背脂入り特大チャーシューラーメンをあげよう」


雑居ビルの一室で三木さんとふたり、並んで食べるカップラーメン。


ムードもなにもないけれど、でも最高に美味しい味がした。