「いえ。何でもないです。お気になさらず」 若干とげとげしい声音だった。 こわっ。 ちょっと怯えたところで、ふと青年の持つキャリーバッグが目に入った。 かなり大きい。これだけで一ヶ月分の衣服が入りそうだ。 誰かの家に泊まりに来たのかな。 いやちょっと待て? 「……もしかして、あなたが雅人くんですか?」 ぴくりと青年の眉が動いた。