プロローグ。 「……居候? うちに?」 『あぁ。父さんの昔馴染みの息子が、この近くに引っ越してくることになってなぁ』 電話の向こうで、父さんが嬉しそうな声を出した。 あの無口な父さんがご機嫌ってことは、お酒でも飲んでるのかな。 そんなことをぼんやり考えながら、私、雨宮桜は自宅のソファーで受話器片手に父さんの話を聞いていた。 窓の外はもう暗い。春とはいえ、四月じゃまだ日が落ちるのも早い。