「ねぇねぇ」
「ん?」
昼間とは違って真っ暗で静かな校舎に私と彼の声が響く。
「付き合い始めた時のこと覚えてる?」
「…当たり前だろ」
「ラブレター…嬉しかったよ」
「実はあのラブレター…何回も書き直したんだぞ」
「嘘…」
いつもはガサツな彼が…?
信じられなくて、つい口を開けたまま斜め上にある彼の顔を見上げていると、
彼は私の視線に気づいて鼻で笑った。
「そりゃあずっと好きだった奴に贈るんだから丁寧に書くだろ」
「その相手を鼻で笑うんだね…」
そっか…。
「初めて手を繋いだ事、覚えてるか?」
「もちろん。
初めて一緒に帰った日だよね」
「お前、すっげぇ手震えてて、それも顔すげぇ真っ赤だったよな。
あの時のお前今思い出しても笑える」
そっか…。
「なにそれっ…そんなこと忘れてよ……」
「忘れないよ。
俺が強く握ったら俺の顔見て、照れた様に笑うんだよ。
……あの時のお前の嬉しそうな表情見た時、絶対大切にしようって決めたんだ」
そっか…。
「2年間ずっとお前が隣にいてくれてすげぇ楽しかったよ」
「私も…すごい楽しかったよ」
私はこの優しい人と別れるんだ…。

