ゆっくり顔を上げると、彼は私を見つめながら、

「初めまして。弟の井上海斗〈いのうえかいと〉です。
いつも綾姉がお世話にってます」

と言って右手を出した。

「ヨロシクお願いします」

「…はい」

私も右手を出す。

指も長くて中指に付けている、シルバーのリングが似合う大きな手。

彼は再度、

「ヨロシク」

と言った。