「何も。朝飯を食ってたら、
『海。2時に空港行って来て。綾が居るから』
としか言われてねーけど」

「本当に?律姉たら…紹介するわ。
私がマネージャーをしている、朝比莉奈さん。海と同級生よ」

「朝比莉奈です。よろしくお願いします」

ペコッと頭を下げて、顔を上げる。

彼は私を見つめながら、右手を出した。

「弟の井上海斗〈いのうえかいと〉です。ヨロシク」

「…はい」

私も右手を出す。

指も長くて中指に付けている、シルバーのリングが似合う大きな手。

彼は再度、

「ヨロシク」

と言った。