邑楽君が手を出しているのに。


握ることができない。


私は唇を噛み締めた。


手を出すだけ。

握るだけ。



どうして出来ないの。

素直になれないの。


「どうした?」

邑楽君は何か分かったみたいに。

「あー。そっか人と接するの嫌い?
ごめんな。分かってなくて」


苦笑いを浮かべてからじゃと言って。


行ってしまった。