わたしの意地悪な弟

 それでも、二人の間に結婚話が出てきたのは驚きで、初めて聞いたときは戸惑いしかなかった。

ただ、わたしも日和も父親の顔を知らず、他に女の人を作り、再婚までしていると知っていたのが悪いようには働かなかったようだ。

わたし達は二人で話し合い、母親の再婚を受け入れることにしたのだ。

 彼は肩越しに振り返ると、得意げに微笑む。一瞬、弟であることを忘れそうなほど、魅力的な笑顔だ。

 その話を聞いて、ほどなくして彼が弟になったのだ。

「迎えに来られて嬉しかった?」

「いいえ。迷惑でした」

 ボイスレコーダーに録音したようないつも繰り返される言葉にため息を吐く。

 彼の足が止まり、鉄製の門を開けると中に入っていく。この大きな家は樹の父親の持家で、再婚して住むようになった。

だが、もう十年住んでくるといつの間にか愛着がわいてくるのは不思議なものだった。

 彼は鍵を開けるとわたしを先に家の中に入れる。そして、扉の閉まる音が聞こえた。

 靴を脱ぐと、樹がぽつりとつぶやくのが聞こえた。