「お前、さっきから好きって連呼するなよ」

「だって本当のことだよ」

「もし、俺が昨日止めなかったら、どうした?」

 彼が何のことを言っているのかすぐにわかる。恐らくキスのことだ。

「わたしは。あの」

 嫌じゃないと思う。でも、嬉しいかと言われたらよく分からない。

 わたしは樹のお姉さんになりたいとずっと思っていたのだ。

 キスをしたら、お姉さんではいられなくなる。血のつながりがないから、尚更だ。

「お前はやっぱりバカだよ。分かってない。だから、俺に好きと二度と言うなよ」

 さっき頬を染めた幸せそうな彼を見た反動だろうか。

そう呻いた彼の表情がやけに、切なそうで、苦しげに見えたのだ。